夢叶わなくとも。アツすぎるスポ根漫画『ピンポン』レビュー

漫画


TVアニメ『ピンポン』公式サイトより引用

この漫画の主人公はお菓子が好きで、卓球の申し子ようなおかっぱ頭の少年。
名前は星野、通称ペコ。
テストは平気で0点を取り学校をサボりはするが、卓球の大会では次から次へ殴り込みをかけてはゴロゴロと一等賞とトロフィーをかっさらう。
その様はさながら、常勝無敗のヒーローです。
本人も自覚があるようで、ピンポン星からやってきた、完全無欠のヒーローを自称しています。


TVアニメ『ピンポン』公式サイトより引用


そしてもう一人の主役とも言えるのが、ペコと幼なじみの月本。
内気でメガネ、通称スマイルと呼ばれている笑わない少年。
ペコにいじめられていたところを助けてもらったのをきっかけに、だんだんとペコに憧れを抱くようになります。

TVアニメ『ピンポン』公式サイトより引用


他にも同じ卓球道場に通っていた気が強い佐久間。改め通称アクマ。

TVアニメ『ピンポン』公式サイトより引用



卓球大国中国のエリートコースから外れてしまった孔。通称チャイナ。

TVアニメ『ピンポン』公式サイトより引用


海王高校のエース、風間。下の名前の竜一から通称ドラゴンなど。

数々のキャラクターの苦悩と再起を描いた群像劇となっています。

全5巻完結で、一日で読み切れてしまう手軽な作品なので、五時間ほどを確保して漫画喫茶に滞在することをおススメします。

漫画版は最後はあっさりと幕引き。ですが、それもそれで気持ちの良い読了感を味わうことができます。

他にもアニメや映画展開もされており、漫画に比べてアニメ版約四時間と短く、キャラクターを深掘りし過程を詳細に描き、カッコいいところはバッチリと決め、それでいて原作の雰囲気を崩さないよう細心の注意がなされていてとってもコッテリ。
漫画とアニメとの改変を見比べてニヤニヤするのもまた面白いですよ?

実写映画は要所要所は押さえているものの、さすがに約二時間で原作の全5巻は押さえきれなかったようで、原作の大事な場面が削れたり消えたりするのは仕方ないと思いつつも勿体なさを感じた。
実写版の弱点であるインターハイクラスの卓球の苛烈さ、不自然に感じてしまうエキストラがポッカリ消えてしまう場面、そういったものをひっくるめてどうしてもアニメの演出や原作の疾走感が頭にチラつく。

私的オススメ順は、アニメ>漫画>実写版


この漫画のテーマは才能


才能。

ここまで残酷な言葉は世の中にないでしょう。

ある一定の段階からは本人の資質、つまりは才能がものいう世界だと、読む人間に叩きつけてきます。

それに嫌悪を抱くか納得するかは各々の自由として、才能か努力か情熱か、そのいずれかを欠落したキャラクター達が悩んで、悔やんで、絶望して、それでも前に進もうとする様は、夢を追いかける全ての人の胸を打ちます。


才能に関する名言が多い


才能とは、平穏を乱す異端児やどこかインチキでズルイものだという嫉妬の視線からか、才能について考えさせられる機会は皆無に近いです。

その点において、これほど才能について考えさせられる漫画は他に類を見ません。

全5巻の各1巻ずつ、考えさせられる名場面ご紹介します。

※もちろんネタバレ注意で。


ピンポン第一巻P132 スマイルが海王に来なかったことを悔やんだ後に続く、ドラゴンのセリフ。


理想を掲げることはたやすいのです。
ただ理想の追求を許された人間は少ない。
限りなくゼロに近いのであります。

誰でもどんな人でも、夢を掲げる権利はある。
しかし、真に有象無象の成層圏を脱する力を持っている者達は極々少数。
それが自分なのかそうでないのか、判断することは一流の人間でもなければ正確に見抜くことはできない。

才能と努力の両者を高めてきたドラゴンだからこそ説得力のあるセリフ。


ピンポン第二巻P104 インターハイ予選 第三回戦チャイナVSスマイル First Gameでのチャイナのセリフ


お前には才能がある。それは認める。だが、それを育てる力がこの国にはない。環境を呪うんだな。


才能はあった。
努力もした。
情熱もあった。

しかし、環境がその全てを拒絶した。

環境といっても様々な要因がくっついています。

国や人種、身分の違いで。
親や社会、周囲に理解されなくて。
金銭的余裕の有無、時間的束縛があって。
生まれてきた時代や取り組んだタイミングの違いで。

才能もそうですがここまで来ると『運』の問題です。
もはや神の領域。
人間如きがどうこうできる次元ではありません。

それでも、スマイルはこの環境の壁を見事打ち破り覚醒し、チャイナに迫ることとなります。


ピンポン第三巻P70 スマイルVSアクマ戦 いつもペコにひっついていただけのスマイルに勝てないと悟ってしまったアクマのセリフ。この後に続く「それはアクマに卓球の才能がないからだよ」が止めを刺す。


どうしてお前なんだよっ!?
一体どうしてっ!!
俺は努力したよっ!!
お前の10倍、いや100倍 1000倍したよっ!
風間さんに認められるために!!
ペコに勝つために!!
それこそ、朝から晩まで卓球のことを考えて・・・卓球に全てを捧げてきたよ、なのにっ・・・


毎日を卓球に捧げても、才能の溝はあまりにも深すぎる。

自分の才能の有無を悟り、身を引かなかったことを頭ごなしに非難しようとも、努力することと情熱を兼ね備えていたアクマを誰が責められようか。

中途半端な実力は、かえって本人を追い詰めてしまう一例です。彼が他人事に思えなくて仕方がない。


ピンポン第四巻P176 インターハイ第二回戦中、トイレで交わされるドラゴンとアクマの会話。


勝利を望むのであれば、それを成し遂げるだけの努力が必要だ、佐久間。


誰よりも努力したアクマにいうセリフなのか。

不器用ながら、誰よりも努力を重ねたアクマのことを、同じ高校の卓球部員でありリーダーでもあるドラゴンが知らないわけがありません。

なのにあえてその言葉を口にするということは、アクマの努力量がまだたりないといっているのか、そもそも努力する資格すらないといっているのか。

・・・・いずれにせよドラゴンに憧れて海王に入ったアクマでさえ、また卓球から離れ核心に一番近づいたアクマでさえも、ドラゴンを隔てるトイレという結界を破ることはできなかった。

彼、ドラゴンはひとりぼっちで戦い続けていたわけだ。

そうすると、この名言は自分に言い聞かせているようにも、本人の悲痛な叫びにも聞こえなくはない。


ピンポン第五巻P112 ペコVSドラゴン準決勝 ペコと最高の試合を繰り広げるThird Gameでのドラゴンの心中。


全身の細胞が狂喜している。
加速せよ、と命じている。
加速せよっ・・・加速せよっ・・・!!
目には映らないもの耳では聞こえない音、集中力が外界を遮断する。
膨張する速度は静止に近い。
奴は当然のように急速な成長を遂げる。
反射する頭脳、瞬発する肉体・・・・・・しだいに引き離されてゆく・・・・・徐々に置いてゆかれる感覚。
優劣は明確。
しかし、焦りはない。
全力で打球している。
全力で反応している。
怯える暇などない。
怯える必要などっ・・・・・・


常に王者であることを求められるドラゴンの重責は、凡人の想像を絶するプレッシャーなのでしょう。
それでも、圧倒的『才能』をまえにしたドラゴンは、そんな呪いのような束縛から徐々に解放されていきます。
卓球を『楽しい』と、心の底から勝ち負け関係なく全力で打ち込むその姿は、ペコだから引き出せたもの。
ペコはスマイルだけのヒーロではない。みんなのヒーローなんだ!!と感じさせてくれる瞬間。


番外編


アニメ版ピンポン#4 絶対に負けない唯一の方法 神奈川インターハイ予選中の田村と小泉の会話より


自分が何者かわかっている才能のあるものは最初から何も望まない。
自分が何者かわからないものほど、もがいて勝って、何かを消化したいんだよ。


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